風間浦村立風間浦小学校    取材日:2018年5月28日  取材者:総務課 千葉 奈津美 五十洲 杏奈

い~ね(稲)!海成段丘で田植え体験

 風間浦小学校は、下風呂小学校・易国間小学校・蛇浦小学校の3校が統合し2016年4月に誕生した。風間浦中学校と渡り廊下で繋がっており、一部特別教室の共用や教員の相互交流により小・中連携教育の推進を図っている。
 玄関には女性職員お手製の風間浦村特産あんこうのかわいい飾りがあり、校長先生と教頭先生と共に私達を出迎えてくれた。

 そんな風間浦小学校には、下北ジオパークの見どころの1つとなっている海成段丘に約300平米の学習田がある。

①ふるさとの自然や人々に関わる体験的な活動を通じて、ふるさとを愛する心を育む
②田植え作業を協力してくださる方々に感謝の気持ちをもち、米作り作業の苦労や楽しさを知ると共 に、協力して作業をやり遂げようとする態度を育てる

 上記のねらいのもと、毎年5月下旬から6月上旬にかけて田植え体験学習を実施している。開校してから始まり今年で3回目となるが、旧蛇浦小学校では過去25年以上続いてきた伝統的な行事となっており、この学習田も旧蛇浦小学校から受け継いだものだ。
 

 田植えをする5・6年生24名は、学習田まで歩いて移動した。
 指導してくれるのは、学習田の管理者である木下重利さん。木下さんは、田植えをする苗(もち米・アネコモチ)はもちろん、あらかじめ農機具で印をつけて田植えをしやすいように準備をしていた。
 その木下さんから、
 「苗は3本ずつ人差し指の第一関節まで植えて抜けないように。」
 「去年の田植えは素晴らしかった。さあ今年はどうかな?」
と、児童達に対しアドバイスと少しのプレッシャーを与えながら、やる気を引き出していた。

 田植え当日は雨が少しぱらつく曇り空で気温は11度という天候の中ではあったが、皆半そで・短パン姿になり、首にタオルを巻き準備万端。5年生と6年生の2つの班に分かれていよいよ田植えが始まった。
 一斉に田んぼに足を入れると、「きゃー、足が動かせない」「田んぼの中の方が温かい」など声をあげながら、泥の感触を楽しんでいた。

 5年生は、田んぼの中を恐る恐る進んでいる様子・・・
 慣れない田んぼに足を取られバランスを崩さないよう慎重に足を進めていた。

 6年生は、昨年経験しているからか1人1人着実に進んでいる。
 腰を曲げてどんどん前に進んでいった。

 苗が手元になくなると「苗ください」と、大きな声を出す。担当の方が苗の束を投げると、ナイスキャッチ!
 顔に泥がはねても気にせず、どんどん田植えを進めていく。

 田植えをしている児童達の中にある人の姿が・・・
 なんと校長先生も一緒に田植えをしているのだ。とても慣れた手つきで行っていて、親近感が沸いた。

 そしてもう一人気になる方を発見。
 生徒と英語を交えて会話をしている人が・・・
 昨年8月から風間浦小学校に赴任しているというアメリカ出身のダマリス・リディア・ヴェラスコ先生。もちろん、田植えは初めての経験。児童達に教わりながら一生懸命植えていた。「風間浦小学校に来てからいろんな体験ができてとても楽しい。」と話してくれた。
 今年の7月に帰国予定ということだ。

 そんな中、「なんかいる!」と一人が泥の中に手を突っ込んだ。皆で注目するとそこにどじょうが現れた。近くにいた男の子達は興味津々。観察を始めた。
 男の子達だけではない。女の子達もミミズなど臆することなく触っている。風間浦村は自然豊かな土地なので、幼い時から触り慣れているのだろう。とても逞しいと思った。

 今回の田植え体験学習を踏まえて5年生に農業や海成段丘について授業を行う。
 一方6年生には、5年生の時に授業を行っているので、復習をしつつ改めて授業を行うそうだ。
 また、6年生の担任の佐藤先生は田植え体験学習の前に、
 「皆はある程度育っている苗を田んぼに植え、秋にその稲を刈って餅つき大会をする。田植えまでの準備や田植えから稲刈りまでの水の管理等、農業で大変な作業は全て木下さんにお任せしている。その大変な作業をしてくれるからこそ、田植えや稲刈り体験ができるんだよ。だから木下さんに感謝しましょう。」と話したという。

 さて、田植えが終盤に近付き、田んぼから出てくる児童が多くなってきたころ、苗を持って田んぼに入る児童がちらほら。
 何をしているのかと思ったら、全体を見て植えた苗の隙間を埋めたり、あぜ道近くまで植えたりして手直ししているのだ。これには木下さんも「何も言われなくてもやるなんて、たいしたものだ。」と、感心していた。

 田植えが終了したら、児童達は一斉に用水路へ。田んぼの横を流れている用水路の水は透き通っていてとても冷たいが、気持ち良さそうに腕や足についた泥を落としていた。
 きれいに落ちたところで飲み物を飲んで休憩と思ったら、飲むのもそこそこに一人がペットボトルを用水路の水で冷やし始めた。面白がって皆も後に続く。そんな姿を微笑ましく眺めた。

 代表の児童4名が感想を発表したが、その中の一人である根戸内一心君は、旧蛇浦小学校の出身のため、「あれから6年・・・」とどこかで聞いたことのあるフレーズを交えて「綺麗に植えることができた。」と、笑顔で話してくれた。

 また、下北ジオパーク推進課の石川さんから説明があった。
 ジオパークとは、ジオ(大地)とパーク(公園)を組み合わせた言葉で、ジオ(大地)・エコ(自然)・ヒト(生活・文化)のつながりを学び、楽しむことができる場所のことだ。
 下北ジオパークのテーマは、
 海と生きる「まさかり」の大地 ~本州最北の地に守り継がれる文化と信仰~ である。
 太平洋・陸奥湾・津軽海峡という特徴が異なる3つの海に囲まれた下北地域。それぞれの海に特徴づけられた独自の風習や文化が下北ジオパークの見どころとなっている。
 その見どころの1つに海成段丘がある。海成段丘とは、もともと浅い海底だった平地が隆起して陸地になり形成された地形のことで、風間浦村の海成段丘は約10万年前に隆起したと言われている。海成段丘に田んぼがあること自体が大変珍しく、貴重な体験をしているという話に児童は真剣に聞き入っていた。

 10月にはカマを片手に手作業で稲刈りをして、刈った稲を束ねて学習田横に干すそうだ。そして11月には収穫したもち米を使用して餅つき大会を予定している。ちなみに、昨年はモミ付で137kg収穫したという。
 児童達は木下さんに感謝の気持ちとともに「稲刈りまでの間、よろしくお願いします。」と、声を合わせ、実りの秋になるよう願った。

 田植え体験終了後、校長先生と少しお話しさせていただいた。風間浦小学校は、田植えの他に1年を通して様々な体験学習(水産教室・ベコ餅作り等)をしているという。
 中でも、今年度も予定している11月の餅つき大会では、同志社大学の留学生が来校し一緒に行うという。「なぜ同志社大学の学生が?」と疑問に思うかもしれないが、風間浦村には同志社大学創設者である新島襄の記念碑がある。その昔、函館に渡航する際に風間浦村に立ち寄ったということで記念碑が作られた。実は、私達は取材前にその記念碑を見に行っていたのだ。記念碑はあるが今でも何か繋がりがあるのだろうかと思っていたが、毎年交流をしていると聞き驚いた。
 また、校舎の前には各学年の畑がある。じゃがいもや枝豆、トマト等を育てている。育てたものを使って料理をしているそうだ。
 この素晴らしい環境でのびのびと育った児童達は将来どんな大人に成長するのだろうか。とても楽しみである。