八戸学院光星高等学校    取材日:2018年5月23日  取材者:総務課 髙村 玲

助けたい、その命。救命講習会

 八戸学院光星高等学校は、スポーツの強豪校として全国的にも有名な学校だが、普通科以外にも様々な学科があり、たくさんの人材を地域社会に送り出している八戸市の拠点校だ。
 そんなたくさんの学科の中で、子どもたちの未来を育む幼児教育のエキスパートや、福祉分野で活躍する介護福祉士などを目指す生徒を実践的なカリキュラムで育てる保育福祉科では、毎年恒例のある授業を行っているのだという。

 5月末の取材当日、朝早く同校へと車を走らせた。学校に到着し校舎を見て大きさ、その立派さにまずびっくりした。玄関で待ってくれていた保育福祉科長の蛯名先生に案内されて体育館へと向かった。

 体育館では、保育福祉科の一年生の女子生徒30人がすでに授業の真っ最中だった。この日、生徒たちを指導してくれるのは東消防署の署員入江さんだ。本日は、いざという時の救命処置の勉強である「救急救命講習会」なのだという。医療、福祉、保育の現場を目指す生徒たちによっては、避けては通れない勉強だと言ってもいいだろう。講師の話に耳を傾ける生徒たち。

 さて、まずは講師の入江さんからお話しがあった。「救命処置が必要とされる緊急事態は、いつどこで起こるか分からないもので、日常生活の中で突然に発生するものです。救急車を呼んでも、全国平均で到着までに9分の時間がかかります。この時間の間に何ができるか、その救命の連鎖が生存率を大きく引き上げます。」

 映像で、実際の救命の現場に関わった同世代の体験談に見入る生徒たち。陸上部で練習中に心停止が発生したような映像を、生徒たちは真剣に見入っていた。

 命に関わる緊急事態としては、心筋梗塞や脳卒中などが多いのだが、お風呂は特に心停止が起きやすい場所なのだそうだ。また、熱中症やアナフィラキシー、低体温症でも命を落とすことがあり、普段からの生活習慣の見直しが、これらの大きな予防になるので、スポーツをするなどの自己管理が必要なのだそうだ。

 基礎的な勉強をした後、蛯名先生はじめ救命処置の普及員の資格を持つ先生方の指導で、いよいよ実技の勉強スタート。
 人体模型を取り囲み、まずは何をすればいいのだろう。
 以下、先生の指導をかいつまんで紹介する。

 道端で倒れているような人がいたら、まずは大丈夫ですかと大きな声で、耳元で呼び掛ける。肩をたたいて呼び掛けながら意識があるのかどうかの確認をする。
 そして、意識がないことを確認した後は、周りに大声で倒れている人がいることを伝えて、協力者を見つけること。
 協力者が見つかったら、それぞれに具体的なお願いをする。「あなたは119番に電話をしてください」「あなたは、AEDを探して持ってきてください。無くても必ず教えてください」
 緊急対応では、焦らず冷静にかつ自主的に行動することが大切なのだなと、取材する私にとっても再確認の時間になった。

 倒れている人に意識が無く、心停止時に見られるような途切れ途切れの苦しい呼吸「死戦期呼吸」が見られたら、呼吸がないと判断し、救命措置を開始する。
 皆で一人ひとり救命措置の実技を訓練した。まずは、胸骨圧迫。1秒間に2回の速さ(1分間に100回~120回の速さ)で30回、胸骨の真ん中を胸が5センチ沈む強さで、しっかりと押し込む。

 そして、人工呼吸。患者の気道を確保して1秒かけて息を吹き込む。胸が上がるのを確認したら、口と鼻を放す。これを10秒以内で2回行う。仮に流血や人工呼吸がためらわれるような場面であれば、胸骨圧迫のみを行うのだが、胸骨圧迫を30回、人工呼吸を2回、これを救急車の到着まで絶え間なく行うことになる。

 生徒たちは、それぞれにこの基本動作を行った。胸骨圧迫の力加減や、人工呼吸は意外に難しいようで、息が漏れているよと指摘されることも。それでも、恥ずかしがらずに実演する生徒たちの一生懸命さが伝わってきた。
 ちなみに、この人体模型にはレサシアンという実際の少女からとった名前があるのだという。

 そして、救命処置の最終段階である、AEDの登場だ。
 AEDとは、正式名称「自動体外式除細動器」という。2004年からは一般市民でも使用できるようになったとのことで、近年は学校や、様々な公共機関に設置されたり、マラソン大会の会場などでも設置されるようになったものだ。
 この機器は、けいれんしてポンプ機能を失い心室細動の状態になった心臓に対して電気ショックを与え、正常なリズムに戻すための医療機器だ。

 生徒たちは初めて触るAEDパッドを慣れない様子で人体模型に張り付け、全員が動作を確認していた。AEDは自動で電気ショックの要不要を判断してくれるので、後は機械の指示に従うことになる。
 これを扱えるようになることが、救命に大きな違いをもたらすことになる。先生からも、学校の中や町内などでAEDがどこに設置されているかを普段から意識するようにとのお話しがあった。

 講習の最後には、講師の入江さんから、その他の救命活動として、喉につかえてしまった異物の除去の方法や、一人で動けない患者を運搬する方法なども伝授してもらった。

 入江さんが、人体運搬を実際に実演してくれることになり、はたと困った様子。周りは体重の軽い女子生徒だけの状況。体重のある男性は記者の私だけということで、急遽、怪我人で意識のない患者役として私の体をお貸しすることになった。

 ぐったりと横たわる私を、背後から腕の下を通してぐるりと腕を回し、がっちりとホールド。体重60キロの一般的な男性である私の体をいとも簡単にズルズルと引っ張って運ぶ小柄な入江さん。
 現場で鍛えられた熟練の技に、引っ張られながらもとても感心したひと時であった。そして、取材者ながらも講習会に役立ち、ほっと一息の終わり間際であった。

 講習会が無事に終わり、修了証が全員に配付された。記念撮影。
 今回の講習会は、将来的には命に関わる医療現場や、様々な事故が想定される育児の現場を目指す生徒皆さんにとっても、実践的でとても役に立つ内容だったと思う。
 命を守るために自分たちに何ができるのかを、普段から頭の片隅に入れて、自主的な行動ができる、命を守れる社会人になって欲しい。